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公益法人の解散手続き

<公益法人の解散手続き>

  人の一生に終わりがあるように、公益法人は、その目的とする社会的活動を継続できないような事情が生じた場合には、その活動を停止し、法人をめぐる法律関係と残余財産を整理(清算という。)しなければなりません。

このような事情を解散事由といい、解散事由発生以後清算結了までの法人を清算法人と呼びます。

  

   

1 解散事由

公益法人の解散事由には、社団法人と財団法人に共通のものと、社団法人に特有なものとがあります。

(1) 社団法人と財団法人に共通の解散事由
ア 定款又は寄附行為で定めた解散事由の発生
イ 法人の目的である事業の成功又はその成功の不能
ウ 破産手続開始の決定
エ 設立許可の取消し又は解散命令

(2) 社団法人に特有な解散事由
ア 総会の決議
イ 社員の欠乏

2 解散手続

破産手続開始の決定及び設立許可の取消しの場合を除き、法人が解散したときは、一定期間内に登記をし、かつ、主務官庁に届出をしなければなりません。一般に清算人が届出義務者及び登記義務者となります。
法人は、解散することについて、定款又は寄附行為の定めるところにより知事の承認などを受けようとするときは、県公益法人規則第14条に規定する解散承認等申請書に次の書類を添えて、知事に提出しなければなりません。
(1) 解散の理由を記載した書類
(2) 財産目録
(3) 定款又は寄附行為に定める解散の手続を経たことを証する書類
(4) 定款又は寄附行為
(5) その他知事が特に必要と認める書類


破産手続開始の決定があった場合には、裁判所書記官が職権をもって当該管轄の登記所に破産手続開始の登記の嘱託をし(破産法第257条)、主務官庁に破産手続開始の決定があった旨を通知することになっています(破産規則第9条第1項)。
主務官庁の設立許可の取消し又は解散命令により解散した場合には、主務官庁の嘱託により当該管轄の登記所に解散の登記をすることとされています(民法施行法第25条の2)。

清算  

1 清算法人

   清算法人とは、解散事由発生以後清算結了までの法人をいい、清算法人は清算の目的の範囲で権利能力及び行為能力を持ちます(民法第73条)。また、法人の行為は清算人により行われます(民法第78条)。さらに、定款及び寄附行為の効力も、法人格が存在する限り、なお持続するものと考えられています。
   清算法人は、清算手続のすべてが完了したときに消滅します。民法は、清算が結了したときは、清算人が、その旨を主務官庁に届け出ることを要求しています(民法第83条)が、その届出は法人格消滅の要件ではありません。届出の有無にかかわらず、清算手続が事実上終了したときに法人は消滅します。

2 清算人

清算人の就任の方法には、次の4種があります。

(1) 理事が就任する場合

破産手続開始の決定による解散の場合を除き、原則として理事が清算人となります(民法第74条本文)。理事が清算人となるには、特別の手続を経る必要はなく、法人の解散と同時に当該清算人としての地位に就くものと解せられます。これは、清算事務を行うためには、活動中の法人の事務執行者が清算人として最も適任であり、法人の事務の継続性が確保され、そうすることが実際上も便利だからです。

(2) 定款又は寄附行為に清算人就任につき別段の定めがある場合(民法第74条ただし書)
定款又は寄附行為に理事以外の者が清算人となる旨の定めがある場合には、解散と同時にその者が清算人となり、従来の理事はその地位を失います。
(3) 社団法人において、総会において選任される場合(民法第74条ただし書)社団法人においては、解散後も総会が最高の意思決定機関として存続するため、民法は、これに清算人の選任権を与えています。総会のこの権限は、清算人の選任について定款に別段の定めがある場合には、その規定が優先されることになりますので、この選任権は行使できないことになります。
(4) 裁判所により選任される場合
以上の手続により清算人に選任される者がいないとき、又は清算人が欠けて損害を生じるおそれがあるときには、裁判所が利害関係人若しくは検察官の請求により、又は職権によって清算人を選任することができます(民法第75条)。

3 清算人の職務

清算人の職務は二つに大別され、一つは解散及び清算人の就職並びに清算の完了を外部に表示すること(登記及び届出)であり、もう一つは本来の清算事務の執行です。


(1) 解散及び清算人の就職の登記及び届出

清算人は、破産手続開始の決定及び設立の許可の取消しの場合を除き、清算人及び解散の登記をしなければなりません。清算人及び解散の登記の内容は、清算人の氏名、住所、解散の原因及び解散の年月日です。清算人及び解散の登記は、解散原因発生後、主たる事務所の所在地においては2週間以内に、その他の事務所の所在地においては3週間以内に行わなければなりません(民法第77条第1項)。また、清算中又は設立許可の取消しの際に就職した清算人についても清算人の登記をしなければなりません(民法第77条第2項、第3項)。これらを怠ると過料に処せられます(民法第84条第1号)。


  

清算人は、清算人及び解散の登記事項を主務官庁に届け出なければなりません(民法第77条第1項)が、その場合には県公益法人規則第15条に規定する清算人及び解散登記完了届に登記簿謄本と解散の理由を記載した書類を添えて、知事に提出しなければなりません。また、清算人が就職したときは、その事実を主務官庁に届け出なければなりません(民法第77条第2項、第3項)が、その場合には、県公益法人規則第16条に規定する清算人就職登記完了届に登記簿謄本を添えて、知事に提出しなければなりません。
なお、清算が結了したときは、清算人は主務官庁に届け出なければなりません(民法第83条)が、その場合には、清算人は県公益法人規則第18条に規定する清算結了届を知事に提出しなければなりません。


(2) 清算事務の執行


ア 現務の結了(民法第78条第1項第1号)

解散後なお継続している事業については、清算人が理事からその事務を引き継ぎ、完結しなければなりません。


イ 債権の取立て及び債務の弁済(民法第78条第1項第2号)
債務の弁済は、清算人の最も重要な職務であり、債権の取立ても、債務の弁済を確保するために同じく重要です。弁済は、債権者を保護するため公告、催告など一定の手続を経てから行わなければなりません。
清算人は、就職の日から2月以内に少なくとも3回、一般債権者に対して、2月以上の一定期間を定めて、その期間内に債権の請求の申出をするよう公告しなければなりません(民法第79条第1項)。債権者がその期間中に申出をしないときは、清算から除斥される旨を付記しなければなりません(民法第79条第2項)。
公告は、登記所がなすべき公告と同一の方法(民法施行法第26条)、すなわち、官報でしなければなりません(法務局及び地方法務局設置に伴う関係法律の整備等に関する法律附則第9項)。
なお、知っている債権者に対しては、個別的に申出の催告をしなければなりません(民法第79条第3項)。


(3) 残余財産の処分

法人が解散したときは、残余財産の処分をしなければなりません。残余財産とは、債務の弁済を完了した後に残存した積極財産をいいます。
債権の取立て及び債務の弁済が完了すると、残余財産が確定します。清算人は、権利の帰属すべき者に残余財産を引き渡さなければなりません(民法第78条第1項第2号)。この引渡しによって、法人の一切の債権債務は消滅し、同時に法人格も消滅します。


公益法人における残余財産の処分には、次の三つの方法があります。

ア 定款又は寄附行為に権利の帰属すべき者が直接指定されている場合(民法第72条第1項)
この場合には、定款又は寄附行為で指定された者に帰属します。
社団法人の社員や財団法人の設立者又はその子孫を権利の帰属すべき者に指定することができるかどうかについては、民法には何らの規定もありませんが、公益法人が公益事業を営む非営利の法人であること、定款又は寄附行為で権利の帰属すべき者を指定しなかった場合の残余財産は、その法人の目的に類似した目的のために処分することができることなどからして、特定の個人を権利の帰属すべき者と指定する定款又は寄附行為の規定は認可すべきではないとされています。


イ 定款又は寄附行為で権利の帰属すべき者の指定がなく、また、その者を指定する方法を定めなかった場合(民法第72条第2項)
この場合には、その法人の目的に類似する目的のために処分することができます。具体的にいかなる者に対して処分するかは、主務官庁の許可を得て、かつ、社団法人にあっては総会の決議を経なければなりません。
法人は、民法第72条第2項の規定により残余財産の処分の許可を受けようとするときは、県公益法人規則第17条第1項に規定する残余財産処分許可申請書に次の書類を添えて、知事に提出しなければなりません。


(1) 残余財産の権利を帰属させようとする者の氏名、住所及び略歴を記載した書類(法人等の場合には、名称及び住所並びに代表者の氏名及び住所を記載した書類並びに定款又は寄附行為)
(2) 残余財産の種類及び総額を記載した書類
(3) 民法第72条第2項ただし書若しくは定款又は寄附行為に定める手続を経たことを証する書類
また、残余財産の権利の帰属すべき者の指定について、定款又は寄附行為の定めるところにより知事の承認などを受けようとするときは、県公益法人規則第17条第2項に規定する残余財産の権利の帰属すべき者の指定承認等申請書を知事に提出しなければなりません。この場合の添付書類は、上記の残余財産処分許可申請書の添付書類と同様です。
ウ 以上の方法によって処分されない財産がある場合(民法第72条第3項)
この場合には、その財産は国庫に帰属します。


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